今どきの仕入れってどうやってるの?飲食店の仕入れEC 四方山ばなし
今日は ”飲食店が仕入れする時に使うECサイトってどんなのがあるの?"という、かなりニッチなテーマをつらつら語ります(笑)。
皆さんこんばんは。いつも重箱の隅をつつくようなテーマ選定でおなじみのコマースわいわいワイドですが、今日は ”飲食店が仕入れする時に使うECサイトってどんなのがあるの?"という、かなりニッチなテーマをつらつら語ります(笑)。
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飲食店の食材仕入れと、toCの食品の買い物の違い
まず最初に飲食店が食材を仕入れる時と、一般消費者が買い物をする時ではどのような違いがあるでしょうか。思いつくものを挙げてみました。
・定期的に購入が発生する
飲食店の場合食品が商売のタネなので、買わないという選択肢はありません
・仕入れるサイズが大きい
当然、一度に仕入れる量は一般家庭よりも多いです
・なんとなく買いが発生しにくい
飲食店の場合メニューが決まっているので、購入する商品もある程度決まっていることがほとんどです。toCのように「今日の晩御飯は何にしようかしら~」というなんとなく買いは発生しづらいのが特徴です
飲食店の仕入れ方いろいろ
飲食店の仕入れ方にも色々な方法があります。
・卸から直接仕入れる
・市場で直接買い付ける
・スーパー/魚屋等の小売り店で買う
・ECサイト/Webの発注サイトで買う…NEW!
色々な選択肢があるものの、何を選択しやすいかには、お店の規模感や業態、客単価が絡んでくるのが飲食店の仕入れの面白い点です。例えばチェーン店やフランチャイズのような大規模店舗は取引先卸が決まっていたりしますが、カウンターしかないような個店では店主の裁量でメニューを決められるため、比較的色々なチャネルで購入しているパターンが多いようです。
また、ここ20年くらいでECサイトやWebの発注サイトで仕入れるという選択肢も出てきましたが、まだまだ普及はしていないようです。
食品分野のEC化が進まない理由
飲食業界はDX化が比較的遅れている業界と言われていますが、それでも支払い周りのDX化(キャッシュレス決済等)やモバイルオーダーは進んできている印象です。ただ、仕入れに関してはまだまだアナログなようで、食品分野のEC化率はBtoCであっても2021年で3.8%。最もEC化が進んでいる書籍、映像・音楽ソフトでは46.2%ということで、かなり差が開いています。
ではなぜ食品のEC化が進まないのか。私なりの意見を挙げだしてみました。
・Webだと物を直接見られない
”キッコーマンの醤油”というように品質がわかる調味料や、調理用資材はECで買えても、ナマモノは現物を見て買わないと品質が見抜きにくい。特に肉や魚は飲食店の主力商品である場合も多く、「買ってみたけど実際届いたものとWeb上の画像と全然違った」では商売が成り立たなくなる。サイトへの信用度が非常に重要。
・手数料とロットの問題
個店の場合、冷凍庫が小さいため一度に大量仕入れが難しい。そのため小ロット注文になるが、ECの場合それだと都度送料が発生してしまう。
一方で、EC化を進めるための追い風も吹いてきています。例えば以下のパターンなんかが考えられます。
・物価高騰、諸外国からの買い負けで安価での仕入れが難しくなってきた
昨今の物価高騰に加えて、ブランド和牛など世界的に有名な商品は日本の卸が中国等に買い負けを起こすケースも出てきているらしく、地方の卸では以前通りの流通量を確保できなかったり、確保できてもとても高かったりするようです。少しでも安く仕入れるためWebを使いだしたパターン
・コロナ禍中に人員削減を行い人手が足りなくなった
緊急事態宣言中などに営業ができず、やむなくアルバイトの人員削減を行った飲食店も多かった。コロナが落ち着き出した頃にはかつてのアルバイトの方たちは別業種に転職しているため戻らない。例えば野菜のみじん切り等の人出のいる仕込みに割ける人員がいないため、カット食材等の業務用加工済み食品を使いたいが、地方だと近くに業務用スーパーがあるとは限らない。そのためWebを使いだしたパターン
入り乱れる仕入れECの世界
ある意味追い風が吹きつつある仕入れEC業界ですが、色々なプレイヤーが入り乱れる界隈でもあります。Webでの仕入れを主としたサービスをいくつか調べてみました。
・モール型…Amazonや楽天も利用されているが、BtoBの仕入れに特化したモールで老舗と言えばMマート。魔窟感のあるUIが掘り出し物がある感を煽ってくれる。
・卸やメーカーが運営するECサイト…買うものが特定ジャンルなのであれば、こだわったものや使い勝手の良いものが仕入れられる。倉庫を持っていたり、自社の配送網があるので送料が安かったり、届くのが早かったりするのがメリット。例えばUCCが運営するフーヅフリッジは、カフェや喫茶店業態に使える商品に強い。
・その他…通販カタログから派生してWebカタログに注力しているサイトや、卸と飲食店のマッチングサイトなど色々なサービスがある。例えば以下のミクリードは居酒屋業態に使えるアイテムに特化したECサイト。ファーストビューのバナーにあるように、カタログとWebが連動しているのが特徴。
個人的に注目するサービス、魚ポチ
加えて、最近売上を伸ばしてきている企業として私が注目しているのが「魚ポチ」さん。生産、卸、流通、小売りと、各プレイヤーの専門性は高いが全体最適を担う役割がいないことがこの業界のボトルネックであり、俯瞰する立場になりたいというのが同社のビジョンです。
ビジネスモデルとしては、全国70か所以上の産地から自社バイヤーが買い付けを行い、大田市場にある自社倉庫で配送手配、店前配達まで一気通貫で行うというもの。この一気通貫というのが、生鮮においては非常に強いと思います。
まず自社の物流拠点を持つのでコールドチェーンの問題や配送時間、送料の問題はクリアできるし、発送情報を随時LINE等でユーザーに知らせることができます(自社で物流を担わないモール系だとできない事です)。
また、バイヤーが買い付けるので商品の品質が保証されていて、かつ前日~翌日の注文可能商品が分かるので、いざ市場まで行かないと商品が決まらないという問題が起こりにくい。
入荷通知ボタンがあったり、同産地・同魚種を探しやすい動線だったりと、サイトのUIも非常に今どきっぽくて、直感的にわかりやすいのも好きです。
食品は他業種と比較するとまだまたEC化率の低いカテゴリではありますが、食品EC自体の市場規模は2014年に1.4兆円だったのが、2021年には2.5兆円まで拡大してきており、これからまだ伸びる余地があります。他業種に漏れずDX化は待ったなしだと思うので、新しいサービスやビジネスはどんどん出てくるはず。今後も注目していきたいジャンルです。